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有給の病気休暇は「年5日の取得義務」に使える?――法定外休暇の落とし穴

結論

年5日の取得義務は「法定の年次有給休暇」が10日に達して初めて発生します。
病気休暇など会社独自の有給休暇(法定外休暇)は、何日与えても義務の対象にならず、5日にもカウントできません

「入社して間もない社員にも、年休とは別に"有給の病気休暇"を設けてあげたい。10日以上与えれば、年5日の取得義務もクリアできるのでは?」
このようなご相談を受けることがあります。社員思いの制度設計ですが、年次有給休暇の取得義務との関係を取り違えると、義務の取りこぼしにつながりかねません。整理しておきましょう。

そもそも「年5日の取得義務」とは

2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者やパートタイマーを含む)について、使用者はそのうち5日を、時季を指定して確実に取得させる義務を負っています(労働基準法39条7項)。

取得させる期間は、付与日(基準日。法律どおりなら入社6か月後、以後1年ごと)から1年以内。労働者が自ら請求して取得した分や、労使協定による計画的付与で取得した分は、この5日から差し引くことができます。

判定するのは「法定の年休」だけ。法定外休暇は数えません

義務の対象になるか(=10日以上付与されるか)は、労働基準法39条1〜3項の法定の年次有給休暇の日数で判断します。

したがって、病気休暇・リフレッシュ休暇など会社が独自に設ける法定外の有給休暇は、たとえ10日以上付与しても、時季指定義務の対象にはなりません(厚生労働省Q&A)。
今回のご相談のように、入社後すぐ法定外の病気休暇を10日与えても、それによって5日の取得義務が前倒しで発生することはありません。義務は、法定の年休が10日付与される入社6か月後の基準日から生じます。

逆向きの落とし穴 ——「病気休暇で5日クリア」はできません

注意したいのは反対のケースです。「うちは有給の病気休暇をしっかり取らせているから、年5日は満たせている」——これは誤りです。

5日としてカウントできるのは、労働者が自ら取得した法定の年休と、計画的付与による法定年休だけ。法定外の特別休暇を取得させても、年5日の取得義務にはカウントされません(厚生労働省Q&A)。法定外休暇を手厚くしている会社ほど、この取り違えで「法定年休5日」が未達になりやすいので要注意です。

義務が生じる起点
法定年休10日
取得させる日数
年5日
取得の期限
基準日から1年

ここに注意

「法定外」の病気休暇では義務は前倒しになりませんが、「法定」の年休を基準日より前倒しして10日付与した場合は、その前倒し日から5日の取得義務が発生します(基準日の前倒しは平成6年1月4日基発1号で認められています)。早く与えるなら、義務の管理も早く始まる点を押さえておきましょう。

自社の「年5日対応」セルフチェック

あてはまるものにチェックを入れてみてください。

チェック結果がここに表示されます。

福利厚生は活かしつつ、義務は別管理で

有給の病気休暇を設けること自体は、社員の安心につながる望ましい取り組みです。大切なのは、それを「法定年休とは別カウント」と正しく位置づけたうえで、①法定年休5日の確実取得は別途しっかり管理する、②就業規則に法定外休暇の取り扱いを明記しておく——この2点をセットで整えることです。

年5日の取得義務に違反すると、対象となる労働者1人につき30万円以下の罰金の対象となり得ます。「良かれと思った制度」が抜け穴にならないよう、休暇制度全体を一度整理しておくことをおすすめします。

顧問先の方は、上のセルフチェックの結果や自社の休暇制度の内容を、そのまま貼ってご相談いただけます。

主な根拠:労働基準法39条7項(年5日の時季指定義務)/厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」「改正労働基準法に関するQ&A」/基準日の前倒し=平成6年1月4日基発第1号。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案については最新の法令・通達をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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