· 

正社員登用と算定基礎届が重なったら? 随時改定が優先されるケースに注意

結論

正社員登用などで随時改定(月変)が見込まれる人は、算定基礎届では報酬月額欄を「空欄」にし、備考欄の「3.月額変更予定」を付けて提出します。
実態を反映する随時改定(7〜9月改定)を優先する、というのが基本ルールです。

「パートとして働いてもらっていた人を、この時期に正社員へ登用する。ちょうど算定基礎届(定時決定)の時期と重なってしまうが、標準報酬月額の手続きはどうなるのか?」
このようなご相談を受けることがあります。算定基礎届の提出は毎年7月1日から7月10日まで。令和8年度(2026年)も7月10日(金)が期限です。この繁忙期に「昇給」「正社員登用」「所定労働時間の変更」が重なると、定時決定と随時改定(月額変更届)のどちらで処理するのかという論点が必ず出てきます。整理しておきましょう。

まず「定時決定」と「随時改定」の関係を整理する

定時決定(算定基礎届)は、7月1日現在のすべての被保険者について、4・5・6月に支払った報酬から標準報酬月額を決め直す、年に一度の手続きです(健康保険法41条)。ここで決まった額が、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

一方、随時改定(月額変更届)は、昇給・降給や所定労働時間の変更など固定的賃金の変動があり、変動後3か月の報酬の平均が現在の標準報酬月額と2等級以上ずれた場合に、その都度行う改定です(同43条)。正社員登用は、所定労働時間も基本給も見直されるのが通常ですから、まさにこの随時改定の対象になり得ます。

そして两者が重なったときは、実態をより正確に反映する随時改定が優先されます。具体的には、7月1日現在の被保険者でも、次のいずれかに当たる人は定時決定の対象から外れます

7月改定の月額変更届を提出する人

8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った人

算定基礎届の提出期間
7/1〜7/10
令和8年度は7/10(金)まで
算定の対象となる月
17日以上
短時間労働者は11日以上
決まった額の適用期間
9月〜翌8月
原則1年間

月変が見込まれる人は、算定基礎届を「空欄+〇」で出す

正社員登用などで7〜9月に随時改定が見込まれる人は、算定基礎届の報酬月額の欄を空欄とし、備考欄の「3.月額変更予定」に〇を付けて提出します。これにより「この人は定時決定ではなく随時改定で処理します」という意思表示になります。

注意したいのは、あくまで「予定」だという点です。固定的賃金は変わったものの、結果として平均額が2等級以上動かず、随時改定に該当しなかった場合は、改めてその人の算定基礎届を提出し直すことになります。「月変予定として外したから、もう何もしなくてよい」わけではない、という運用上の落とし穴です。

ここに注意

「月額変更予定」で算定基礎届から外した人は、後日の随時改定の結果まで含めて1セットです。予定どおり月変に該当すれば月額変更届を、該当しなければ算定基礎届を、それぞれ出し直す——この最後の確認を忘れると、その人だけ標準報酬月額が更新されないまま残ってしまいます。提出者リストにチェック欄を設けておくと安全です。

区分が途中で変わった人——支払基礎日数は「締め日」で判断

算定基礎届では、原則として支払基礎日数が17日以上の月だけを平均して標準報酬月額を計算します。ただし、週の所定労働時間や月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者は、11日以上に読み替えられます(健康保険法施行規則24条の2)。

パートから正社員へ期の途中で切り替わった人は、4・5・6月のうちに「短時間労働者である月」と「そうでない月」が混在します。この場合は、各月の被保険者区分に応じた支払基礎日数(17日/11日)で、その月が算定の対象になるかどうかを月ごとに判断します(令和5年6月27日事務連絡)。そして、どちらの区分に当たるかは、報酬の給与計算期間の末日(締め日)を基準に決めます「「登用日」ではなく「その月の締め日時点でどちらだったか」で見る、という点がポイントです。

算定基礎届セルフチェック

この夏の手続きに向けて、あてはまるものにチェックを入れてみてください。

チェック結果がここに表示されます。

経営者への示唆——「7月だけの作業」にしない

算定基礎届は7月の提出物ですが、判断の材料がそろうのは登用や昇給を決めた時点です。「とりあえず4〜6月の給与を平均して出す」と機械的に処理してしまうと、本来は随時改定で処理すべき人を取り違え、標準報酬月額が実態とずれたまま1年間固定される——その分、保険料や将来の年金額にも影響が及びます。

対策はシンプルです。昇給・登用・契約変更を決めるたびに「この人は月変の対象になりそうか」を一言メモしておくこと。これだけで7月の作業は格段に正確かつ楽になります。標準報酬月額は、毎月の保険料だけでなく、傷病手当金や出産手当金、将来の年金の計算にも使われる土台の数字です。だからこそ、入口の区分けを丁寧にしておく価値があります。

顧問先の方は、上のセルフチェックの結果や対象者リストを、そのまま貼ってご相談いただけます。

主な根拠:健康保険法41条(定時決定)・43条(随時改定)/健康保険法施行規則24条の2(短時間労働者の支払基礎日数)/日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」「令和8年度の算定基礎届のご提出について」/区分混在時の取扱い=令和5年6月27日事務連絡。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案については最新の法令・通達をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

この疑問、IBSの顧問先は「チャットひとつ」で実しています

IBSの顧問先には専用のチャットグループがあります。
今回のような疑問も、日々の「これってどうなの?」も、思いついたときに一言送るだけ。

顧問先の方へ

いつものグループチャットでお気軽にどうぞ。
「うちの場合はどうなる?」と、そのまま聞いていただけます。

まだ顧問先でない方へ

この「気軽に聞ける環境」を、貴社にも。
まずは無料相談をお気軽にどうぞ。

無料相談を申し込む Chatworkでコンタクト申請 顧問プランを見る

フリーダイヤル 0120-100-299(IBSグループ)

▶ ほかのお役立ち記事も読む