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"賃上げはコスト"はもう古い? 国の中小企業「稼ぐ力」強化戦略、6本柱の読み解き方

結論

2026年6月、国(中小企業庁)が中小企業の「稼ぐ力」強化戦略を公表しました。メッセージは明快で、人手不足の時代は"数より質"。現状維持ではなく生産性向上・価格転嫁・事業再編に動く企業を国が徹底支援し、賃上げは"コスト"ではなく「成長の起点」と位置づけました。

「人手が集まらない。値上げも言い出しにくい。うちは当面、現状維持でしのぐしかない」——このように感じておられる経営者は少なくありません。ところが2026年6月に国が公表した中小企業向けの新しい戦略は、その"現状維持"にこそ警鐘を鳴らす内容でした。社労士の立場からも、賃上げ・人材確保・生産性向上に直結するテーマなので、経営者目線で要点を整理します。

経営戦略を議論する会議チーム

この戦略の一番の主張——「現状維持は静かに縮む」「賃上げは成長の起点」

戦略の名前は「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」。少しかたい名前ですが、背景はシンプルです。これからの20年で生産年齢人口は約1,500万人減ると見込まれ、すでに約6割の中小企業が人手不足に直面しています。人がもっとも希少な"財"になる時代には、量を追うのではなく「数より質」——一人ひとり・一社一社の質を高めた"強い中小企業"をつくる必要がある、というのが国の問題意識です。

ここでいう「稼ぐ力」とは、一人当たりの付加価値(付加価値労働生産性)のこと。付加価値(分子)を増やしながら、労働投入量(分母)を最適化する——つまり「少ない人数で、より高い価値を生む」経営への転換です。そしてもう一つの核心が賃上げの位置づけ。戦略は、賃上げは単なる分配政策ではなく、人材を惹き付け、生産性向上投資を促し、企業の行動変容を促進する「供給力強化政策」そのものであり、成長戦略の起点だと明言しました。人手不足を理由に収益を削って行う「防衛的賃上げ」から、賃上げが成長を生む「成長的賃上げ」へ——その発想転換を促しています。

支援の"6本柱"——自社はどこで使える?

戦略は、変化に挑む企業への支援を6つの方向で強化するとしています。自社の課題と照らし合わせてみてください。

① 価格転嫁・取引適正化

取適法・振興法(令和8年1月施行)で「協議に応じない一方的な代金決定」「手形払等」を禁止に。官公需(国・地方で30兆円規模)でも価格転嫁を徹底。値上げ交渉の"追い風"です。

② 成長支援・生産性向上

省力化・AI・DX投資(省力化投資促進プラン、よろず支援拠点の生産性向上支援センター等)、研究開発(中小企業技術基盤強化税制の拡充)、輸出挑戦(新規輸出1万者支援)を後押し。

③ M&A・事業承継等による事業再編

事業承継税制の特例(相続・贈与の期限は2027年12月末)、中小M&A支援の質向上(支援資格制度の創設)、後継者育成の強化。承継を成長のきっかけに。

④ 成長を促進する中小企業金融

不動産担保・経営者保証に頼らない事業性評価融資へ。企業価値担保権(事業性融資推進法・令和8年5月施行)、成長投資への協調融資、「成長型再生」を推進。

⑤ 賃上げの促進

賃上げ促進税制の抜本見直しを検討。生産性向上の補助金は、足下の賃上げ状況も審査・評価する仕組みへ。賃上げを成長に結びつける後押し。

⑥ 伴走支援体制の強化

商工会・商工会議所、よろず支援拠点などが「相談待ち」からプッシュ型支援へ。経営計画・資金繰りづくりから実行まで、専門家が伴走する体制を整備。

あわせて、変化に挑む企業の投資を国策である「17の戦略分野」やサプライチェーンへの参入につなげ、地域の成長にも波及させるとしています。

ここに注意

この戦略は"方向性"を示すもので、実際の支援は個別の補助金・税制・制度として運用されます。金額・要件・期限は制度ごとに異なり、今後具体化・変更される部分もあります。例えば事業承継税制の特例措置は、相続・贈与の期限が2027年12月末で、その後のあり方は令和9年度税制改正で結論を得るとされています。実際に動くときは、最新の公募要領・要件を必ずご確認ください

自社の「稼ぐ力」戦略セルフチェック

あてはまるものにチェックを入れてみてください。

チェック結果がここに表示されます。

経営者への示唆——"稼ぐ力"を数字でつかみ、支援を使い倒す

この戦略が突きつけるのは、「現状維持は、静かに縮んでいく」という現実です。まずやりたいのは、自社の「一人当たり付加価値」を数字でつかむこと。そのうえで、①価格転嫁はできているか、②省力化・AI投資でムリ・ムダを減らせないか、③承継・再編という選択肢はあるか、④賃上げの原資をどう設計するか——を順に点検し、それぞれを国の支援メニュー(補助金・税制・金融・伴走支援)に結びつけて動くのが実践的です。

とりわけ賃上げは、この戦略の"背骨"です。原資を生む生産性向上、価格転嫁、そして人材が定着する労務環境づくりは、いずれも社労士がお手伝いできる領域です。「防衛的賃上げ」で消耗する前に、賃上げを成長につなげる設計へ。自社が今どの柱を使えるのか、専門家の伴走とあわせて整理しておきたいところです。

顧問先の方は、上のセルフチェックの結果を、そのまま貼ってご相談いただけます。

主な根拠:経済産業省・中小企業庁「「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」を公表します」(2026年6月24日)および同「強化戦略(本文)」(令和8年6月 中小企業庁)。個別の補助金・税制・制度は方向性であり、金額・要件・期限は最新の公募要領・通達をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案については専門家にご相談ください。

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